はじめに
一般相対性理論 内山龍雄著 裳華房を読んでいると、第4章 重力場の方程式 Einstein の方程式 において Einstein の方程式を導出する過程で 曲率 の 定理9 が重要であることが分かる。しかしこの定理の証明は「読者にまかせよう」となっていて載っていない。
定理9 を引用すると
定理 9. およびその1階、2階の微係数だけからできている2階対称反変テンソルで、 の2階微係数については1次式とする。いまこのテンソルを とするとき、これが恒等式
を満足するならば、それは必ず
という形に表される。
は Einstein の曲率テンソルである。
これを証明無しで「そういう定理が成り立っている」として納得して読んでも、理解にはあまり影響ないかもしれない(まあそういう式はたくさんある)。 しかし結構重要な定理なので個人的に気持ちが悪い。
自力で証明してみる。
証明
証明の方法は本に載っている定理8 と同じ道筋をたどる。
まず Riemann 空間内の1点 において を原点とする局所 Lorentz 系を考え、その系を - 系とする。
したがって では
である。
の代わりに 2階対称共変テンソル を考える。 また の条件については後で考え、ここでは考慮しないでおく。
点Pにおける局所 Lorentz 系において がどのように表現されるのかを考える。 まず の1階微分係数は になるからこの系では考慮しなくて良い。
そうすると を表わす項としては
- の2階微係数である4階共変テンソルに2階反変テンソルをかけ、2階共変テンソルに縮約する項。
- の2階微係数である4階共変テンソルに2階反変テンソルを2つかけ、スカラーに縮約しさらに2階共変テンソルをかけた項。
- スカラー定数に2階共変テンソルをかけた項。
となる。
2., 3. についてはまさしく定理8で示したスカラーに2階共変テンソルをかけた項となる。
定理8(これは本に証明が載っている)を引用すると
定理 8. およびその1階、2階の微係数だけからできているスカラーで、 2階微係数については1次式とする。このようなスカラーの最も一般なものは
である。
はスカラー曲率である。
そこでまず 1. の場合の項のみを考える。
と について対称であることを考慮すると
という形になる。 は未定の定数である。
ここである座標系への変換 を考える。いま 系として
とする。 は任意の定数の係数で について対称とする。 これは定理8の場合と同じである。
がテンソルであるためには、この系に変換しても式の形が不変である必要がある。この要請から の関係を求めてみる。
原点 P の近くでは であるから
点 においては
が成り立つ。
よって - 系でも
となり、これも局所 Lorentz 系の一つである。
一方 の 2階微分については本の定理8の証明を参考に
同様にして
ここまでは定理8と同じである。
これらを用いて - 系の量で をかき表わすと
となる。
と 、 と 、さらに の添字 がそれぞれ対称であることを用いると前式の右辺の { } の中は
となる。
がテンソルであるためには、この項が とならなくてはならないから
となる。
よって
が得られる。
一方、本の (15.8)式によると局所 Lorentz 系では曲率テンソルは、添字を適当に修正して
となる。
の式は と について対称であるから入れ替えることができる。 さらに微分の順番や の添字も入れ替えられるから、それらを適当に施すと
となる。 は本の (15.13)式で定義されている Ricci のテンソルである。
これまでは局所 Lorentz 系で考えてきたが、上式の両辺は共にテンソルであるから、この等式はどんな座標系でも成立する。
ここまでは場合分けの 1. の項を考えてきたが、その他の 2. と 3. の項を考える。 これは定理8で示したスカラー
に2階共変テンソルをかけた項となる。
よって の式として
の形を考えるとこれも 2階対称共変テンソルである。
ここで の条件について考える。
両辺に をかけ、 を作用させると
となる。
最後の項が消えるのは による。
この形で共変微分が になるのは Einstein の曲率テンソルで、本の (15.21)式で定義されている。
である。
よって は
または反変テンソルの形で
となる。